レットー氏の言い分
18 10 08 - 03:11 彼は何も言うつもりはないと初めに言った。そうだろう、彼には何も言うべき理由などないのだから。 彼は用意されていたホテルを辞退して、近くの安ホテルへと消えた。
お湯がでないのはこの国では当たり前だ。冷や水を浴びながら、長旅の疲れを癒すまでもなく、
大袈裟なベットに寝転がった。すると、ガイドの人間がドアをノックしただけで入ってきた。
「今夜は眠れそうかい」そう尋ねるガイドに
「強いお酒はあるか」と彼は尋ねた。
「お酒よりもっと刺激的なのがあるぜ」
刺激的なもの、彼は想いを馳せて、刺激を求めているか考え始めた。
「いいのあるよ、日本人なら彼女らも喜ぶ」
「今日は疲れてるから、明日の朝、必ず起こしてくれ」
そう頼むとガイドは「いい子たちだよ、何もダイジョブ」
「明日朝、港までの車を用意してくれ」
そういって、レットー氏はテレビのチャンネルを回しながら、
ようやく眠りにつく事ができた。
ドアをノックする音がした。ずいぶん乱暴な叩き様だ。
「車、用意してるから」ガイドが大声で外から叫んでいた。
「わかった、すぐ行く、テンミニッツ」といって洗面台に向かった。
「オッケー、外で待ってるよ」
この国に入って初めての朝、何となく慌ただしく、でも時間には敏感ではない。
自分の感覚とは違う悠長な流れが自然と入り込んで来る。
昨夜、空港からとにかく眠るための場を確保して、それでもまだ違和感が消えない。
レットー氏の感覚は鈍感な気持ちを最優先にもって行く事を心得ている。
今日は朝から港まで向かうんだ。そう思いながら目的は港までではない。
その先の島々から彼女を探し出さなくてはならない。
レットー氏は島の名前を突き止めているが、どうもそのスペリングが違うらしい。
島は名のあるものから、あっても無人島もある。それでも港で足止めをくっている暇はない。
そのうち、ゴトーから連絡があるだろう。
僕はどちらでもいいがレットー氏はそれに従うしかないのかもしれない。
安ホテルの前には運転手付きの旧式日本車が運転手と一緒に陽気に待ち構えていた。
ガイドも同乗していざ港へとハイウェイなのかよくわからない道を南下していった。道沿いにはもっともらしいパーキングエリアもどきがあったり、駄菓子屋の延長線上の飲食店が並んでいた。港のパータンゲイズまでは車で約3時間弱というガイドの弁である。
レットー氏はゴトーからの連絡を気にすることもなく、早朝からの出発という事あり、頭をコクリ、コクリと繰り返している。ガイドはやたらと上機嫌を装い、それがあまりにも大袈裟だったのか運転手もすこし辟易しているようであった。運転手は至極安全を心がけ、それはここの悠長さと比例しているようでもあり、ガイドの上機嫌はまさしくこの状況を満喫していることが伺われた。
国道ともこちらの高速道路ともとれる車窓は道路脇から奥に進む熱帯の樹々をみれば、その森林をぶつ切りのラインを僕らが突き抜けているのが分かる。
そのぶつ切り方がいい加減なせいかある程度便利ではあるが、森林伐採反対というより仕事をおくれといった風情の人々が道路脇に暇を持て余している。

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